要件定義

システム企画とは?システム開発の成否を大きく分ける

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「システム企画をしないといけないけど何をしたら良いかわからない」

こんな課題はないだろうか。もしあなたもその一人であれば、悩む必要はない。あなた以外にも多くの人が同じ課題に悩まされている。

なぜなら、システム企画とは何かを理解してきちんと実行できている人は少ないためだ。

そもそもシステム企画は、システム開発の際上流工程に位置付けられているため携わったことがある人が少ない。さらに、システム企画で実行する「課題を見つけて解決策を提案する」という作業は、比較的抽象的な作業であるため具体的に何をするべきかを理解して忠実に実行できている人も少ないからだ。

しかし、安心して欲しい。この記事ではシステム企画の目的と重要性、そしてそれを実行するためのポイント、関連してよく聞かれる内容を説明している。

この記事を「読みながらシステム企画を実行できる」レベルで記載している。あなたがシステム企画を進める手助けが必ずできるはずだ。

1 システム企画とは

この章では、システム企画とは何かを以下の4つの点から解説する。
・行うこと
・目的
・ゴール
・システム開発全体における位置付け

1-1 現状の課題を定義し、解決策を提示すること

システム企画で行うことは、以下の2点だ。
・現状の業務における課題を特定する
・それを解決するための戦略的なアプローチを提示する

そもそもシステム企画の目的は、企業の経営目標を達成するために新規事業の創出や業務の改善に寄与するシステムを企画することである。企画の方向性としては以下の3つがあり得る。
・システムを使った新ビジネスの創出:新たな市場ニーズを満たすために、新しいシステムを企画・設計することである。
既存ビジネスの業務効率を上げるシステム構築:業務プロセスの改善や効率化を目指して、既存のシステムの再設計または改良を行う。
既存ビジネスの意思決定をレベルアップするための情報活用:これまで活用されていなかったデータを分析し、ビジネス上の意思決定をサポートする新たなシステムを提案する。

そのため、システム企画では上記のような企画の元となっている現状の課題を特定し、それのシステム化による解決策を示す。解決策には既存システムの再構築や、新規システムの構築があり得る。また単純なシステム化だけではなく、業務フローや組織体制などシステム以外の変更が含まれる場合もある。

1-2 事業の創出や業務改善に役立つシステムを企画することが目的

システム企画の目的は、企業の経営目標を達成するために新規事業の創出や業務の改善に寄与するシステムを企画することである。

・システムを使った新ビジネスの創出:新たな市場ニーズを満たすために、新しいシステムを企画・設計することである。
既存ビジネスの業務効率を上げるシステム構築:業務プロセスの改善や効率化を目指して、既存のシステムの再設計または改良を行う。
既存ビジネスの意思決定をレベルアップするための情報活用:これまで活用されていなかったデータを分析し、ビジネス上の意思決定をサポートする新たなシステムを提案する。

1-3 システムの新規構築や改善を企画し、承認を受けることがゴール

システム企画のゴールは、システムの新規構築や改善の企画案を作成し、それに対して関連部署や上層部から承認を得ることである。承認を得ることで、企画は実行段階へと進む。

ただし、企画の性質によって承認を得る対象が異なる。業務フローや組織体制の変更を伴わない新規システムの構築や既存システムの改善であれば「システム化の実行」が対象である。

しかし、業務フローや組織体制の変更を伴う大規模な複雑なシステムの構築や既存システムの改善であれば「システム化の検討」が対象である。

1-4 システム開発全体で一番最初に取り組むこと

システム企画は、システム開発の全体プロセスの中で最初に取り組む内容である。そのため、このフェーズで成果物として出す企画の品質が開発プロジェクト全体の結果に大きく影響する。

企画としての狙いが悪いと、どんなに良い開発チームで開発プロジェクトを進めても最終的なビジネスゴールは達成できない。

例えば、「売り上げアップ」という会社の目標があるとしよう。その際に、優秀な開発チームが納期を半年以上前倒しでプロジェクトを完遂させたとしよう。しかし、システム企画の目的がコスト削減だったとしたら、会社としての目標には全くかすりもしないのだ。もっとも、そういった企画はそもそも承認されない可能性が高いが。

2 システム企画の質がシステム開発の成否を決める

システム企画がシステム開発の成否を決めてしまう理由を具体例をもとに説明する。

2-1 ニーズに合致しないものを作ってしまう可能性があるから

一つ目は、ニーズに合わないシステムを開発してしまう可能性があるからだ。

たとえば、経営目標とシステムで実現する内容がずれてしまっている場合だ。

前職で企画を行っていた時に、こんなことがあった。当時はtoC向けのアプリを開発・運用していた。とある四半期の企画をする部署全体の目標として、PV数を前年同期比で125%にするという目標が掲げられた。

筆者は課題を徹底的に洗い出していき、いくつかの企画を作成した。その中には以下のようなものがあった。
・アプリのトップページに表示される情報をユーザにパーソナライズするための表示処理をする機能改善案件
・ユーザからの問い合わせを迅速に解決するためのFAQシステムの導入案件
・検索キーワードのサジェストをする機能改善案件

しかし、明らかに真ん中のFAQシステムはPV数をあげる目的からは遠い案件であった。そのため、この企画は通ることなく却下された。

2-2 使われないものを作ってしまう可能性があるから

二つ目は、現場で使われないシステムが作られてしまう可能性があるからだ。

たとえば、実際の現場の業務フローとシステムで想定している業務フローが異なる場合だ。

実際、筆者が関わったプロジェクトではこんなことがあった。そのプロジェクトでは複数の店舗を持つ小売企業向けに環境関連データの可視化ツールを作っていた。そのシステムでは、店舗全体での電気使用量などの月次データの推移を管理できる機能を持っていた。

そのシステムでは本社の担当者が各店舗からの実績値を集計してデータを入力することを想定していた。そのため、各項目に対して合計値が入力される想定で作られていた。

しかし、実際使ってくれそうな企業にシステムのテスト利用をしてもらったところ、各店舗の担当者がデータを入力する業務フローだった。そのため、システムの設計レベルからの作り直しが発生してしまった。

3 システム企画の取り組み手順

システム企画の取り組み手順について、以下のシステム企画書をもとに読みながら実行できるレベルで解説する。

ワーケーションプラン紹介システム企画書

3-1 ビジネスの現状を把握する。

まず最初にビジネスやシステム企画が必要になった背景を把握する。

これはシステム企画書の2ページ目のプロジェクトの背景に該当する。

3-2 ニーズや課題を把握する

次に、ニーズを把握し整理する。この際にニーズや課題を経営レベル、業務レベル、業務の仕組みレベルに分けて整理することが重要だ。

なぜなら、それぞれシステム企画書に落とし込んだ時に以下の項目に対応をするからだ。

ニーズや課題の分類具体例システム企画書の項目
経営レベル売り上げアップ企画の目的
業務レベル新規ユーザーの獲得が非効率になっている解決すべき問題・課題
課題解決の効果の試算対象
業務の仕組みレベルサイトが複数に分かれているため、同様なマーケティング施策を複数サイトで行っている課題解決のためのポイントの根拠
解決策の立案根拠

経営レベルのニーズ・課題は企画書の2ページ目「プロジェクトの背景・目的>目的」に該当する。

また、業務レベルの課題や業務の仕組みレベルでの課題が企画書の3ページ目「解決すべき問題・課題」に該当する。

3-3 解決策の立案と効果の試算をする

次に、それらのニーズや課題に対してどのように対応するか、解決策を立案し、効果を算出する。

この際、重要なことは以下の3つを丁寧に論理の飛躍なく行うことだ。
・「業務レベルの課題」を構成する「業務の仕組みレベルの課題」を細かく分解し、それに対して解決のポイントを定義する
・上記の「解決のポイント」を満たす解決策を提案する
・業務レベルの課題を解決した場合の定量的な効果提示する。この際、企画の目的ときちんと紐づける。

以下にサンプルを添付する。

3-4 実行計画の立案をする

解決策が定まったら、具体的な実行計画を立てる。これには、スケジュールや予算が含まれる。ただし、予算に関してはこの段階では概算でしかなく、正確な数字は開発会社などに見積もりを取ることになる。

スケジュールは大まかにどの段階でどのフェーズが終わっているのかを把握できる程度に書く必要がある。

開発プロジェクトでは、以下のフェーズに分けて記載するのが一般的だ。
・要件定義
・設計
・開発
・テスト
・受け入れ
・修正
・リリース

3-5 提案の準備をする

実行計画が立ったら、関連部署や上層部に提案する。これを行うには、資料の作成、予定の調整、プレゼンテーションの準備などが必要だ。

ここでのポイントは、承認権限がある人のスケジュールを優先してその他のタスクを進めていくことだ。一般的に、承認権限があるような役職にいる人はスケジュールを抑えるのが難しい。そのため、自分のタスクを優先してしまっていると適切なタイミングで提案ができなくなってしまう。

3-6 提案の実施とフォローを行う

最後に、提案を実施し、承認を得るためのフォローアップを行う。これには質疑応答の対応や、提案内容の見直し、修正などが含まれる。

企画を提案しても一発で承認が降りない場合もある。その際には、改善したら承認が降りるレベルなのであれば改善を検討する必要がある。

4 システム企画についてよくある質問3選

この章では、今まで説明してきた内容とは異なる観点から、よくある質問について其の回答を記載していく。

4-1 システム企画に必要なスキルはなにか?

システム企画ではコミュニケーション能力、課題分析能力、プレゼンテーション能力などが求められる。

なぜなら企画を進めるために、様々な立場の人から話を聞き、その中から課題を分析・決定し、最終的に解決策の提案を決裁権のある上司や役員に対して行う必要があるからだ。そしてこの提案の際にはプレゼンテーションを行う可能性が高い。

特に重要なのはコミュニケーション能力と課題分析能力だ。この二つがないと、そもそも事業上の課題が抽出できない。つまり、企画とは課題を解決するために行うものだと考えると、そもそも企画を作れないということになってしまう。

4-2 システム企画の外注化はできるのか

システム企画において専門的な知識やスキルについての支援が必要な場合、外部のコンサルタントやITベンダーに委託することもある。

ただし、外注するからといって全部を任せきりにするのは良くない。外注される方はシステム企画などには詳しいかもしれないが、あくまでも自社のビジネスに詳しいのは社内の人間だからだ。

そのため、外注する際も主導権は自社で持ち、外注で依頼する業者にはあくまでも助言や作業の補助をしてもらうことを目的にすることをお勧めする。

弊社でもシステム企画業務は請け負っている。そのため、以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

4-3 アウトプットとして何ができるか?

システム企画の主なアウトプットは以下の4つだ。
・システム企画書
・プレゼンテーション資料
・RFP
・開発パートナーの評価基準と評価表

後者の2つは企画が承認されて実行されるとなれば外部のパートナーを選ぶために必要になる。

まとめ

システム企画の目的と重要性、そしてそれを実行するためのポイント、関連してよく聞かれる内容を説明してきた。

この記事があなたのシステム企画を進める手助けができていたら幸いだ。

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