「要求定義について基礎から学びたい!」
「失敗しない製品づくりのためにも、自分の要求をしっかり言語化できるようになりたい」
「要求定義について少しは理解できているけど、もっと深く知りたい」
このように思っている人も多いのではないか。「要求定義まとめて」と会社で言われても、実は「要求定義そのもの」をあまりわかっていないという人も少なくない。
だが実際に要求定義に関しての本を調べてみると、たくさんの本が紹介されている。それぞれ本の内容によって対象となる読者は異なるため、自分に合う本を選ばなければ時間が無駄になってしまう。
そんな時間が限られているあなたのために、こちらで以下の4冊を厳選した。難易度を5つ星で表現している。自分の知識レベルと業務での役割に合わせてどの本を選べばいいのか考えてもらえると幸いだ。
タイトル | 難易度 | 概要 |
---|---|---|
はじめよう! 要件定義 ~ビギナーからベテランまで | ★☆☆☆☆ | ・要件定義について身近な例を交えて基本のフローを紹介している。 ・要件定義についてを知ることで、要求定義で何を決めておかなければならないのかがわかる |
はじめよう!プロセス設計 ~要件定義のその前に | ★★☆☆☆ | ・要求定義において重要なプロセス設計に特化して紹介している ・プロセス設計の重要性が身近な例でわかる |
今すぐ使える!要求定義のチェックポイント427:「見えない」顧客を知るための例文集 | ★★★★☆ | ・今まさに要求のヒアリングをする必要があるSE向けに書かれている ・フェーズ / 場面別のチェックリストがあり、実践的な内容になっている ・SEが気にするポイントを把握することで、発注者として要求を定義する質を上げることができる |
図解入門よくわかる最新要求定義実践のポイント:“曖昧さ”と“不確実性”を仕様化するために | ★★★★★ | ・要求のヒアリングをするSE向けに書かれている ・正解はなく、妥当性を重視して実行する大切さを説いている ・経営戦略とシステムの要求の整合性を重視するなど、より高い視座で要求定義について学べる |
それでは、それぞれ詳しく見ていこう。
1 はじめよう!要件定義~ビギナーからベテランまで(難易度:★☆☆☆☆)
まずは要求定義を初めて勉強する初心者に向けての本を紹介する。前提として初心者は図があって、網羅的なものを読むべきと考えられる。なぜなら文章だけだと具体的にわからないからだ。
そういう面で、この本は今から要求定義を勉強する初心者にはとてもわかりやすい。専門用語が少なく、初心者が理解しやすいイラストや具体例をたくさん用いているからだ。
1-1 本の内容
第1部 要件定義って何だろう?
第2部 要件定義の詳細
あとがき
要件定義の基本から高度なスキルまでを広範に網羅している。初心者向けの基本的な要件定義の手順はもちろん、ベテランのエンジニアでも新たな視点を得られるような各工程における深い洞察が紹介されている。
1-2.本の特徴
要件定義という本のタイトルから「要求定義ではなく、要件定義の本なのでは?」と思われるかもしれない。確かに本の内容は要件定義を主としているが、要件定義とは何かを知ることで要求定義を逆算して考えることができる。
この本の最大の魅力は、以下の点である。
・イラストが多いこと
・身近な例えを多く含んでいること
難しい専門用語は身近な例に置き換えて説明されているため「あ、なるほどね」と腑に落ちるシーンが多く、スラスラと読める。
この本では、要求定義で相手に自分の要求を的確に伝えなければ、工程が進むうちに修正や追加項目が増えて開発に余計な工数が掛かってしまうことが強調されている。これを次のように具体的にレストランの例で説明することで、業務知識がない人でもわかりやすいように書かれている。
例えば、お客様がシェフに「おまかせ」と注文したとしよう。しかし、出てきたものがお客様の嫌いな食材が使われていたら「食べられない」というだろう。ただ、シェフからすれば「ならば最初に言ってほしい」という本音があるはずだ。
1-3. こんな人におすすめ
この本は以下のような人にお勧めしたい。
・システム開発関係において初心者の人
・専門用語が苦手な人
・まずは基礎から要件定義、要求定義を知りたい人
1-4. レビュー
システムの発注側・自社サービスの企業の企画部に読んでもらいたい一冊です。
この1冊を初めに他のも読んでみると良いかもです。
SE・プログラマーがどのような情報(食材)があれば、システム(料理)を作れるかが大体分かります。
プロジェクトの要件定義の時点でコケてる理由って、大体はこの本が書いてあることが上手くいってない状態です。
あとがきの「本書を読んだ後に」のところにも書いていますが、
「受注して作る技術者よりもむしろ作ってほしい要件をお持ちの発注側の方々にこそお読みいただければ本当に嬉しく思います。」とのことです。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2FDOOGQI2IYS0/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4774172286
非常にわかりやすかった。ユーザー側として、システムの作り手とどんな情報をどんな方法でやり取りする必要があるのか、シンプルで具体的な説明のお陰で理解することができた。やりたいことがあるのに、どんなツールを準備する必要があるのかわからず困っていたところだったので、とても助かった。まずはここで上げられている項目を書きだしてみようと思う。著者の他の書籍も読んでみます。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R3G3HT2Z9DL7D5/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4774172286
2 はじめよう!プロセス設計 ~要件定義のその前に(難易度:★★☆☆☆)
2-1.~本の内容~
第1部 プロセス設計って何だろう?
第2部 プロセスの構成要素
第2.5部 既存プロセスの見える化~第2部と第3部の間のお話~
第3部 プロセスの設計方法
まとめ 現代の魔法使いとして
この本は「プロセス設計」をテーマとした一冊である。
要求定義では、全体として以下のことを行う。
・システムの理想像を描く
・プロセス設計
・予算などの制約の明確化
「システムの理想像を描く」とは、システムを使って実現したいことを定義することである。例えば動画配信サービスであれば、「誰もが動画を自由に共有できて、その動画を他の人が自由に視聴できる」という状態を描くことだ。
プロセス設計とは、理想の状態を実現するためにこのシステムを使う人はどういう手順を踏むのかを設計することである。先述の動画配信サービスであれば以下のようなプロセスがありうる。
1 配信者は動画ファイルを用意する
2 配信者は動画配信サービスにログインする
3 配信者は動画配信サービスに動画をアップロードする
4 動画配信サービスの運営側は、アップロードされた動画に残虐なコンテンツが含まれいていないかをチェックする
5 動画配信サービスの運営側は、4の工程で問題がないと判断した場合のみ、動画を他のユーザも見れる状態に更新する
予算などの制約の明確化とは、システム開発に使える資金やシステムをリリースする時期などの制約を明確にすることだ。これによって、何を作ることができるかが決まってくる。つまり、「資金が限られていれば開発できる機能数は少なくなる」というようなことだ。
なぜプロセス設計について学ぶ必要があるのかというと、要求定義の中でかなり重要な工程だからだ。実際のシステム開発はここで定義されたプロセスがもとになる。そのため、冗長なプロセスを想定してしまうと、その分開発量が多くなってしまう。また、実際と違うプロセスを定義してしまうと完成したシステムの使い勝手が悪くなってしまう。
例えば、企業向けのデータ分析アプリを開発していた時にこんなことがあった。そのアプリでは、企業活動の環境に関連するデータを経年で管理するという目的で作られていた。最初の想定では、本社の担当者が水の使用量などを全社の使用量の合計値を合算したものを入力するとしていた。しかし、実際に顧客に確認したところ、拠点や工場ごとにデータを入力するフローでないと使い勝手が悪いことがわかった。
2-2.本の特徴
こちらは「はじめよう!要件定義」の続編である。「はじめよう!要件定義」の「第2章 要件定義の詳細」を大幅にかみ砕いて解説している。
前編ではソフトウェア関係者目線での視点が多く含まれていたが、本書ではもっと大まかに「この世で働く全ての人」をターゲットに執筆されている。システム開発における要件定義以前の、業務プロセスのあるべき姿や問題解決をするためのプロセスを詳細に解説している。
また、前作に続いてイラストが多く、わかりにくい専門用語飲みによる解説がないのも特徴である。
2-3 こんな人におすすめ
・前編を読んだが要求定義についてより深く知りたい人
・システム開発以前に、業務をより効率化したかったり問題解決のための考え方を学びたい人
2-4.レビュー一覧
業務プロセスの見直しが必要だと思い、手に取りました。
見直すための進め方など、大変参考になりましたが、
プロセスの見直し(生産効率アップ)にとどまらず、仕事の付加価値を上げるためのことにも言及しておりますので、良い本でした。
タイトルがIT向けになっておりますが、万人向けに読んでもらいたい本です。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RRXUQTE8TZJSX/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4774185922
働き方改革で、まず必要になるのが、仕事の棚卸し。見える化するためには必要な知識です。プロセスについて分かりやすく解説されています。発注者もエンジニアも、おすすめです。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RFTODLMVUD1IR/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4774185922
3 今すぐ使える!要求定義のチェックポイント427:「見えない」顧客を知るための例文集(難易度:★★★★☆)
3-1.本の内容
第1部 要求定義オリエンテーション
第1章 要求定義担当者の心得
第2部 フェーズ別チェックリスト
第2章 準備フェーズ
第3章 基盤整備フェーズ
第4章 要求獲得フェーズ
第5章 引渡しフェーズ
付録 一歩踏み込んだフェーズ別チェックリスト
付録1 一歩踏み込んだ準備フェーズのチェックリスト
付録2 一歩踏み込んだ基盤整備フェーズのチェックリスト
付録3 一歩踏み込んだ要求獲得フェーズのチェックリスト
システム開発における“要求”を向上させることで、工程変更を最小限にさせるコツを解説している。「どう聞けば要求を引き出せるのだろう?」と悩む人も各フェーズ別にまとめてあるため、状況に合わせて一問一答的に適宜参照していくことができる。
3-2.本の特徴
この本の特徴は、要求定義に特化していて、具体的なアクションリストとして活用できる点だ。要求定義を今まさにやらなければならないSE向けに効果的に進めるコツとして、フェーズ・状況別で書かれている。
SE向けに要求を効果的に聞き出すことに主眼が置かれているが、SEが気にすることを把握して、それをクリアにすることは、発注者がより効果的な発注をするための役にたつことは間違いない。
3-3.この本はこんな人に向いている
・文章が多くても平気な人
・自分の状況に応じて、ピンポイントに実践的な情報を探したい人
3-4.レビュー一覧
要求・要件定義または顧客と仕様検討の経験がある場合、共感を得られる箇所がいくつかある。一問一答形式ほど簡略ではないが、ヒアリング例題に対して、その意図と想定回答が示されており、読みやすい。
各所で解説される重要ポイントが重複しているため冗長に感じるが、いわゆる例題&解説・回答形式なのでやむを得ないと思うし、それで良いと思う。
読み物としては5〜6時間で読み終わるが、いざ本番に挑むときのチェックリストとしても使えるので再利用価値がある。
私の場合は、本番後(顧客とのミーティング後)に振り返り、漏れがなかったかを再確認するためのチェックリストとして利用するつもり。
目次がチェックリストそのものになっているので、使い勝手をよく考えられた本であると感心する。
ただし427項目もあるので、実際には案件タイプに応じて集約したチェックリストを作成し、適用してみようと思う。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RAAFXDPIOO7YV/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4798106984
経験のない人には一見簡単な作業に見えるが、形の見えないソフトウェアの世界ではこれが意外と難しい。また大型ソフトになると、ステークホルダーが多種多様いて意見をまとめることだけでも至難のワザだ。具体例は敢えてここでは書かないが、本書は未経験者が必ずハマる落とし穴に落ちないように細かいチェックリストが提供されているところが他書籍にはない差別化要素である。経験の浅いシステムアナリストやプロジェクトマネジャーにぜひ一読をお勧めする。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RGPR9RUPDWIYD/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4798106984
4 図解入門よくわかる最新要求定義実践のポイント:“曖昧さ”と“不確実性”を仕様化するために(知識レベル:★★★★★)
4-1.本の内容
第1部 要求定義のコツと心構え
第1章 マネジメントの観点から考える
第2章 現場の力学と心構え
第2部 要求定義をマネジメントする
第3章 顧客とのコミュニケーション
第4章 開発組織のマネジメント
第5章 スコープ確定のためのマネジメント
第6章 スコープ変更管理のマネジメント
第7章 制約条件のマネジメント
第8章 トレードオフのマネジメント
第9章 品質要求のマネジメント
第3部 ドキュメントのマネジメント
第10章 文書及び文書化のマネジメント
要求定義に求められるものは「正解」ではなく「妥当な解」であるとし、それを得るためのコツが書かれている。というのも、システム活用においては圧倒的に多くの考慮すべき事項が存在していて、それを全て考慮した上で正解を出すのは不可能であり、そもそも正解が存在しないためである。
例えば、システム活用で求められるのは、自動化や効率化だけではなく、付加価値の創出や経営支援、情報活用支援など多岐に渡る。
4-2.本の特徴
この本も一つ前の本と同様に、SE向けに書かれている。正解を出すというよりは、妥当な回を模索し続けるためにどうするかという視点で発注者との折衝の仕方や心構えについて書かれている。
これは発注者側が読むのにも大変役立つ。なぜなら、この本ではより大上段に立ってシステム開発の要求が企業の中期経営方針とどう結びつくのかと言ったそもそものビジネス的な視点を重視する必要性を謳っているからだ。つまり、裏を返せば発注する側としても、システム企画をする際にはこの視点が重要であるということである。
4-3.この本はこんな人に向いている
・要求定義の前に心構えや目的を明確にしたい
・要求定義を網羅的に勉強したい
・ビジネスの大上段に立った視点から要求定義について理解したい
・イラストは少しあれば十分
まとめ
今回は要求定義について4冊厳選して紹介した。
今から要求定義について勉強する人も、更に詳しく知りたい人にとっても参考になる一冊が見つかればとても嬉しい。
そして手に入れた本をきっかけに更なる活躍ができることを心より願っている。