「システム開発ってなんだろう」「IT部門に配属されたけど、これからどうしたら良いかわからない」
こんな悩みはないだろうか?
そこで、システム開発を10年近く経験してきた筆者が、発注側のシステム担当者が「これだけ読んでおけば間違いない」と自信を持ってお勧めできる本を4冊紹介する。
書籍タイトル | ポイント |
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1週間でシステム開発の基礎が学べる本 (1週間で基礎が学べるシリーズ) | ・発注者や受注者のどちらかに偏った内容ではないため、基礎となる内容が把握できる ・システム開発初心者が最初に外観を掴むのに向いている |
システムを「外注」するときに読む本 | ・システム開発の一連の流れにおける発注者の心構えを把握できる ・ストーリー形式なので読みやすく、具体的な状況が想像できる ・1冊目で概観を把握した後に、より具体的な内容を一歩踏み込んで学ぶ際のとっかかりになる |
情シス・IT担当者[必携] システム発注から導入までを成功させる90の鉄則 | ・システム開発一連の流れにおける発注者としての心構えを把握できる ・各フェーズにおける鉄則が端的に書かれているため、あとから気になる部分だけをチェックリスト的に確認できる ・2冊目を読んだ後に、気になる箇所を深めるのに適している |
システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ | ・「何を作るか」を重点に解説している ・特に上記のフェーズを深めたいという時に適している ・中〜上級者向け |
書籍は難度別に紹介し、どういった課題を抱えている人におすすめなのかも細かく解説する。気になる本があれば、ぜひ読んでみてほしい。
1まず全体を俯瞰して浅く広く知りたい時に読む本
まずシステム開発の初心者が1冊目に読むべき本を紹介する。
1冊目の本に期待することは、全体を俯瞰して考えることができるレベルの内容が書かれているかだ。
その際に内容が深すぎないことも重視したい。いきなり内容が深すぎると、理解するのに時間がかかってしまうだけでなく、理解できないことによる挫折にもつながるからだ。
1−1 1週間でシステム開発の基礎が学べる本 (1週間で基礎が学べるシリーズ)(難度:★☆☆)
まず、最初に紹介するのは「1週間でシステム開発の基礎が学べる本 (1週間で基礎が学べるシリーズ)」だ。
基本情報
タイトル | 1週間でシステム開発の基礎が学べる本 (1週間で基礎が学べるシリーズ) |
金額 | 2,618円 |
発行年月日 | 2023年6月21日 |
ページ数 | 272ページ |
Amazonのリンク | 1週間でシステム開発の基礎が学べる本 (1週間で基礎が学べるシリーズ) |
ポイント
システム開発について、発注者・受注者の立場のどちらかに偏ることなく書かれてる。
特定の視点から描かれているわけではないため、基本的な内容を俯瞰して把握することに向いている。
また1週間で学べるとある通り、わかりやすさを重視している点も読みやすさ・理解のしやすさを後押ししている。
1冊目としてさらっとシステム開発の全体像を把握する目的であれば一番最適だと言える。
おすすめしたい読者
システム開発についての知識が全くない方で、特定の項目について知りたいわけではなく全体を俯瞰したい人。
この本から始めることで、システム開発の全体像をさらっと把握でき、より深い内容について学ぶ足がかかりになる。
2システム開発を依頼する側としての心構えを深めたい時に読む本
この章ではシステム開発の全体像は把握しているが、よりよくシステム開発プロジェクトを進めたいというニーズを持った方向けの本を紹介する。
主にシステム開発を依頼する際の発注者側の心構えなどを記している。
2−1システムを「外注」するときに読む本(難度:★★☆)
まず紹介するのが、「システムを「外注」するときに読む本」だ。
基本情報
タイトル | システムを「外注」するときに読む本 |
金額 | 2,178円 |
発行年月日 | 2017年6月15日 |
ページ数 | 352ページ |
Amazonのリンク | システムを「外注」するときに読む本 |
ポイント
システム開発の全体それぞれで起こるトラブルや課題について、ストーリー形式で紹介し、それに対する対応策や心構えまで解説している。
特筆すべきポイントは、ストーリー形式で具体例をもとに課題や対応策について紹介されるため、かなり内容が頭に入ってきやすい点だ。
ただし、ストーリー形式という特性上、網羅性やノウハウの詳細な点については理解するのが難しいと感じた。そのため、次に挙げるような網羅的にノウハウを示してくれるような本と一緒に読むことをお勧めする。
この本は、具体的なプロジェクトの進み方やそれぞれのフェーズでの課題を把握し、より深い知識を得るための足がかかりとして活用するととても効果が高いように思う。
おすすめしたい読者
システム開発の全体像についての知識はついたがまだ実践経験がない方に是非ともお勧めしたい。
1冊目で紹介した本の次に読むと絶大な効果があるはずだ。なぜなら、深い知識をつける前にそれを知る「意義」やそれが必要になる「状況」を理解することで学習速度が段違いに早くなるからだ。
深い知識をつけるのは難しい話が多くなるため忍耐力が必要になる。また、実践経験を伴わないとその知識を理解して、自分でも使えるようになるのはかなり難しい。
そこでこの本を読めば、具体的なプロジェクトでの課題や困りごとの例をもとに、擬似的な実践経験を積むことができる。そうすることで、より深い知識を学ぶ意義や、深い知識を学ぶ際に「あの時こうしたらよかったのかも」などリアルに近い状況を想像しながら学習できる。
2−2情シス・IT担当者[必携] システム発注から導入までを成功させる90の鉄則(難度:★★☆)
次に紹介するのが、「情シス・IT担当者[必携] システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」だ。
基本情報
タイトル | 情シス・IT担当者[必携] システム発注から導入までを成功させる90の鉄則 |
金額 | 2,398円 |
発行年月日 | 2017年4月11日 |
ページ数 | 256ページ |
Amazonのリンク | 情シス・IT担当者[必携] システム発注から導入までを成功させる90の鉄則 |
ポイント
システム開発の全体をフェーズで分割し、その各フェーズごとに心構え(ルール)が端的に記載されている。
特筆すべきポイントとしては、開発プロジェクトの範囲だけではなく、システムのリリース後の利用段階についても記載されている点だ。他の書籍だと手薄になりがちな「システムの受け入れ」や「ユーザ教育を含めた本格稼働」、「運用・保守」についても他の章と同じようなレベルで言及されている。
一つ前に紹介した書籍がストーリー形式で読みやすさを重視していたために、ノウハウの部分やより包括的な事象の記述が弱かった点をカバーできている。
そのため、前の書籍と合わせて読むことでより包括的で具体的なノウハウが身につく。
おすすめしたい読者
システム開発プロジェクトの経験があり、基本的な心構えはわかっている人におすすめしたい。または、プロジェクトの経験はなくても一つ前の書籍で擬似的なプロジェクト体験ができた方にもおすすめだ。
以下のような用途に向いていると言える。
・システム開発の勘所を、要点を絞ってチェックリスト的に適宜参照する
3システム開発における契約について理解を深めたい時に読む本
3−1システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ(難度:★★★)
ここで紹介するのが、「システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ」だ。
基本情報
タイトル | システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ |
金額 | 2,860円 |
発行年月日 | 2021年7月21日 |
ページ数 | 388ページ |
Amazonのリンク | システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ |
ポイント
この本は、システムをうまく「作らせる」ために必要なことについて語られている。特に企画〜業務要件決めフェーズの記述がかなり詳しい。
筆者がこの本をおすすめしたいポイントは以下の2つだ。
・著者が徹底的に「何を作るべきか」を重視している
・その著者が独自のフレームワークをもとに「何を作るべきか」を検討するステップを詳細に紹介している
まず、著者は戦略立案から企画、システム開発、実行まで行うケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズという企業で数多くのシステム開発案件を手がけている。著者の実際の案件では、要件定義に当てる工数の割合が30%程度であり、一般的に言われている10%という数字からは大きく差があると述べられている。「何を作るか」を重視していることが顕著に現れているエピソードだ。
また、この本ではそんな著者が実際にプロジェクトで使用している独自のフレームワークをもとに「何を作るか」を徹底的に吟味していく方法論が具体的に記載されている。
著者が実際の取り組み事例をもとに詳細にノウハウを公開してくれているだけあって、何を作るかを決めるフェーズについては相当な知識を得られる。
おすすめしたい読者
システム開発の全体像は把握していて、そもそも論でどうしたら良いシステム開発ができるのかという根本的な内容を知りたい方向けだ。
特にシステム企画を担当する人や、要件定義を担当する人などにはぴったりだ。
ただし、そのフェーズはまだ担当しないが、今後のために勉強したいという人にとっても視座を上げるためにおすすめできると言える。
まとめ
システム開発の本を4つ、レベル別に紹介してきた。
4つ目は特に難しいが、ここまで理解して使いこなすことができたらかなりレベルが高い担当者になれるはずだ。
そこまでは一足飛びに行けなくても、2つ目までは楽しんで読めると思う。ここまで理解できているだけでも、その後の業務で注意すべき内容を自発的に考えられるようになると思う。
読者の方が主体的に楽しんで業務に取り組むスキルをつけるために必要なシステム開発関連の本をピックアップしてきたつもりだが、この記事が少しでもお役に立てていたら幸いだ。